2010-11-16

PROFESSIONaL






百本以上もある鉄板を切断してる時だった、最後の1本に差し掛かった時に、バンっと機会が指を巻き込んだんだ。
あっという間の事だったので何が起きたかも分からなかった、ただ流れで仕事をした事はなかったんだが、そうなってしまったんだ。


自分がこの工場を継ぐ事になったのも成り行きと言えば良いのかな。
父がリタイアしたがっていて、僕がまだ働いていたからね。
父が働いていた頃、母は週2・3日事務仕事手伝っていたくらいだったけど、父がリタイアした途端ずっと手伝うようになってたんだ。
僕は、それぞれ自分の仕事が何か分かっている奴らと一緒に働けてラッキーだった。ある人はレイアウトなんかが得意で、他にも力仕事をする奴も…
ここにはたくさんある仕事を手早く終わらせる事が出来る奴ばかり、アーティストのように細部までこだわる訳じゃないが、とにかく仕事を早いんだ。
そういう細かくこだわるとこは僕が得意だったからね。


まだ学んでるとこだけどね、これからずっとそうさ。
それが自分の強みを磨くってことだからね、もっと上手くなりたいって思いがさ。
早く、正確に、さらに早く…
もし自分が学んでないってならそれは問題だ、仕事を投げ出してるってことだから。


僕は大工のところに弟子入りしないか?と言われたんだ、そして学校でそれを学んで自分で家も建てたさ。
高校ん時に結婚したから、早い事お金になる仕事を探さないといけなかった。
1番手っ取り早かったのが、父がやっていたこの組み立て工場だったって訳。
それからはずっとここで働いてる。


自明かも知れないけど年齢を重ねるにつれ「自分はこんなことに向いてたんじゃないか?」って分かってくるんだ。
僕は学校に行く気はならなかった、成績は良かったんだけど好きじゃなかったんだよ。
でも自分の天職がこれだってのは気付いてたね。


同じことを長い事することは滅多にない、たまに1日とか2日くらい同じ仕事が続くことがあるけどそれ位が限界だね。普段は数時間くらいで別の事をしてるよ。
毎日そんな感じだから、モノトーンな日々にはなってないと思うよ。


こうやって鉄を扱うビジネスでは、切ったり溶接したり…鉄を使う事ならほとんど何でも作れる。もし何か足りないモノがあれば自分で作るまでさ。
自分でモノをつくるってのは、アーティストでもそうだけどしんどい事なんだ、自分でもしんどいってのは分かってる。
でも出来上がったモノを手に取ってみると「俺が作ったんだ!」って思える。
同じモノを作れる人間は他にそう多くないんだと思うと、自分で満足も出来る。
でも同じことをずっとやってくるとその気持ちも特別なものではなくなってくる、若いときはそれが必要だったんだけどな。


昔から1番大きく変わったのは、どのビジネスでもそうだけどコンピューターだな。
レーザーとかウォータージェットとかで細かなパターンのように、それまで打ち抜いたりしなきゃダメだったのが、今では数千もの仕事を一気に片付けちまう。
しかも安くね。
うちでやってるような仕事は毎回違う仕事ばかりだから、コンピューターが必要ってことはないな。


うちの家族の中で誰かが工場を継ぐってことがあれば、それは願ったり叶ったり。
それで金儲けしようってんじゃなくて、ただ彼が工場を継いで動かし続けるってのがさ。
ついでに言うと、自分の技術とか経験も伝えて行きたい。
そうしないと、自分が持つモノなんて死ぬ時に消えてなくなるだけだから。


自分の仕事に誇りをもってしてる奴ってのは、みんな技術や知識を次の世代に伝えて行きたいと思ってるはずなんだ。
孫達に工場を継いで欲しいなんて、彼らには言ったことはないし言わないつもりだ。
いま言ったところで嫌がるだけだから、時が来るのを待ってみるさ。


「お祖父ちゃんの工場継ぎたい」って言ってきたら、自分の持ってるもの全てを伝えるさ。
僕ほど長いこと働いて欲しくはないけどね、家族との時間も大切にして欲しいから。
いまの子供はキツい仕事はしたくないって言う、でも誰かがしなきゃダメなんだ。
この仕事も衰退してきてるとは言え、いつでも色んな仕事が来る。
どんなに辛いときでも、なんだかんだ仕事はあるもんだ。
雇われてるのと違って、他の人間が出来ない仕事だからしなきゃダメなんだ。
食ってくにはそうするもんだ、シンプルなことさ。


僕は後悔したってことはないな、当たり前だけど何するにしても失敗ってのはするもんさ。
失敗ってのは自分に何かを教えてるんだ、だから失敗から学ぶんだ。


それが僕の経験(人生)だね。


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アメリカの経済成長を支えてきた、ユタ州にある町工場の3代目のモノローグ。


Vimeoで観て「これほど魅入らせるモノローグが、これまでにあったかな?」と思い、僭越ながら意訳してみました。
口調なんかは、おじさんの顔だったり語り口調からこんなのかな?と思っただけなんで、文句ある人はコメントください。笑



2 件のコメント:

photoapp さんのコメント...

素晴らしい話をありがとう。人生ってのはこういう積み重ねた何かなんだよね。ごめんなさい。直接エントリーと違う感想で。

私自身、自分の家族に何かを伝えられる生き方が出来るようにコツコツと頑張ってます。

Nishimaki Naosuke さんのコメント...

>photoappさん
コメントありがとうございます。

僕は学生ですが「下の世代に何を残すか」と考えつつ残りの学生生活を過ごしていきたいと思います。
人生を通じて何を伝えて行きたいか?ということまではまだまだ頭が廻らないので…笑